「創業計画書」とは
「創業計画書」とは創業資金の融資を日本政策金融公庫へ申し込みする際に提出する様式です
「創業計画書」はコンパクトながら、良くできた作りをしており、日本政策金融公庫へ実際に借入を検討するかどうかを検討する以前であっても、例えば、そもそも、自分の考えている事業が成り立つかどうかを検討するためのシートとしても大変有効に使えます。
「創業計画書」様式を利用して、自身の起業プランの検証に活用してみましょう。
「創業計画書」の内容について
以下では、日本公庫方式の「創業計画書」様式に従い、書き方を説明します
「創業計画書」は、全2ページ、以下の6つの項目からできています。
■(1ページめ)
1 創業の動機
2 事業の経験等
3 取扱商品・サービス
4 取引先・取引条件等
■(2ページめ)
5 必要な資金と調達の方法
6 事業の見通し(月平均)
「創業計画書」各項目の書き方
1 創業の動機
1 創業の動機・事業の経験等
・業種、・創業 (予定) 時期
・創業されるのは、どのような目的、動機からですか?
「創業計画書」には、まず、①日本公庫の創業資金融資制度の申込条件を満たしているかのチェックの意義があります、次に、②審査を行うに当たっての基本的な情報(事業の内容、事業計画、経営者のこと)を確認し、面談の際にはこれらに関連する項目を質疑応答をしようとするものです。
従って、①自身(自社)が申込条件を満たしていることが分かるように書くこと、次に、限られたスペースを有効に活用して、自身(自社)の思いや計画を簡潔・明瞭に表現することが大切です。
業種
会社の場合は、定款の目的欄と矛盾がないように注意が必要です
定款にはあるが今はやっていないような業種の記入は行わず、
今回の融資の申請の対象になる事業のみを書けば良いでしょう。
説明が難しい業種の場合は、○○業(○○等の販売)のように、
一般的な業種分類と具体的な事業の内容と併記するなどの工夫が必要です。
(申込融資制度の対象外の業種と疑われないような記載も大切です)
創業 (予定) 時期
既に創業しているのか、予定なかの明確化がまず大切です。
既に創業をしている場合は、創業後の期間が創業融資制度の申込条件内に入っていることが絶対条件です。
既に創業している場合は、実績(各種数値や取引先等)を含めた今後の計画の提出が必要になります。
創業されるのは、どのような目的、動機からですか?
限られたスペースを有効に活用して、簡潔・明瞭に、上手にアピールすることが大切です。
2の「事業の経験」や、3の「セールスポイント」と関連がある項目ですので、これらと関連付けて、質疑応答に対応できるように、自らの考えをきちんと整理しておくことが大切です。
公的資金(国民の税金)を使うわけですから、「ある程度の公的な意義とその真実性・実現性がある」目的や動機であった方が、良いのは言うまでもありません。
2 事業の経験等
2 創業の経験等
・過去にご自分で事業を経営していたことはありますか。
・この事業の経験はありますか
(お勤め先、勤務年数など創業にいたるまでのご経歴)
・取得されている資格
・創業される方(法人の場合、代表者の方)の現在のお借入の状況
(事業資金を除きます)
過去にご自分で事業を経営していたことはありますか。
もしあれば、アピール材料になりますので、説明用資料を準備しておきましょう。
この事業の経験はありますか
(お勤め先、勤務年数など創業にいたるまでのご経歴)
まったく同じ事業でなくとも、経験が活かせる項目があることをアピールしましょう
(経験の有無は重視される項目です)
取得されている資格
事業に活かせる資格があればアピールしましょう
創業される方(法人の場合、代表者の方)の現在のお借入の状況
(事業資金を除きます)
該当ある場合は、正直に記載しましょう。
3 取扱商品・サービス
3 取扱商品・サービス
・お取り扱いの商品・サービスを具体的にお書き下さい。
・セールスポイントは何ですか
お取り扱いの商品・サービスを具体的にお書き下さい。
売上計画の詳細を作成する場合の「分類方法」と同じグルーピング方法で記載してください。
「なぜ、このような分類の仕方をしているのか?」が、納得のいくような内容にすることが大切です。
セールスポイントは何ですか。
PRができる箇所です。「この限られたスペースでいかに上手に、自社の商品やサービスをPRできるかの能力が問われている」と考えて、チャレンジしてみましょう。
(観点)
・自社の強み、他との差別化要因は何か
・どんな顧客(ターゲット)に、何を提供して行くか?
・上記の理由(社会的意義・地域的意義と自らが行う理由)
・品質や安全性等、確保しなければならない点に関する配慮も忘れずに
・具体的な商品、サービスの内容や仕組を示す資料等を別紙で用意する
・創業計画は発展性や将来の可能性を強調するような場合も多いが、融資では安全税・確実性の方がより重視されます。
ターゲットとする市場の有望性と安定性の両方を根拠を持って示す
(必要であれば統計等調査)
・自らの経験については幅広い見地から書くこと(異業種などで経験なしのような記述はNG)
・事業計画の評価や融資の可否評価は、1)計画の妥当性と、2)その計画を実行する経営者としての人物評価の2点が重視されます。これらの項目と面接が、人物評価(能力とやる気)の為の重要な根拠となります。
・簡潔にまとめることと、多くのバックデータが理想(表紙は簡潔明瞭、その根拠を求められたら十分な資料ありが良い。量(もちろん内容も大切ですが)は、「やる気」を表現する手段にもなる)
4 取引先・取引条件
4 取引先・取引条件
・販売先、仕入先、外注先に関する以下を記入
取引先名(所在地等)、シェア、掛取引の割合、回収・支払の条件
・従業員等
・人件費の支払(給与〆日・支払日、ボーナス支給月)
販売先、仕入先、外注先に関すること
具体的に誰から買って、誰に売るのか、どのような人員で行うのかを絞り込みます。
事業が具体的に見えていれば比較的に簡単に書ける項目です。
実際に記入するかどうかは別として、固有名詞で書けることが大切です。
この項目が、まだ具体的に書けない場合は、
市場や業界の分析、調査が不足していることが予想されます。
逆に具体的な「客先名や取引先名が多すぎて書ききれない」場合は、客先や取引先をいくつかのグループに分けまとめます。
また、一般顧客を対象とするような固有名詞では書けない業種では具体的にどのような客層をターゲットとするのかを、根拠を持って説明できると良いでしょう。
人件費の支払(給与〆日・支払日、ボーナス支給月)
従業員を雇用する計画がある場合には、ここでアピールします。
(雇用を伴う起業は評価されます)
当然のことですが、事業計画数値に人件費が見込まれていることが必要です。
5必要な資金と調達の方法(その1)
5 必要な資金と調達の方法
・必要な資金
設備資金と運転資金
・調達の方法
自己資金と借入
この部分の書き方はいろいろな手順が考えられますが、
例えば、計画初期段階であれば、以下のような手順をお薦めします。
まず、「5 必要な資金と調達の方法」の左上 「必要な資金の設備資金」の欄を考えます。
具体的に事業を行うにあたって最初に買わなければならない設備などの明細を書きます。
併せて、その下の「運転資金」の欄に、創業時のみかかる費用(案内チラシやカタログ、広告などの費用)があれば書いておきます。
※「調達の方法」の欄は、まだここでは書きません
6 事業の見通し(月平均)
6 事業の見通し
・創業当初と軌道に乗った後(いつ頃か)に関して
売上高、売上原価(仕入高)、経費(人件費、家賃、支払利息、その他、合計)、
利益(※個人事業主の場合は人件費に事業主分は含めません)
・売上高、売上原価(仕入高)、経費の根拠
次に、「6 事業の見通し(月平均)創業当初、軌道に乗った後(いつ頃)」に飛びます
まず、開業当初の「売上」、「売上原価」、「経費」を記入し、「損益」を算出します。
「利息」の部分は最初は空欄でOKです。
次に、当面目標とする状態になったときの「売上」「売上原価」「経費」を記入し、
「損益」を算出します。こちらも
「利息」の部分は最初は空欄でOKです。
また、この軌道に乗るのはいつなのか(○年○月)を書きます
それぞれの数字は根拠を持って積み上げ式で作りましょう。
ある程度まとまって来たら、
創業当初から軌道に乗るまでの間のそれぞれの月別の数字も作ってみましょう。
次に軌道に乗るまでに、利益が赤字になっていればその金額を合算します。
また、売上の回収と費用の支払の時期にズレ(その分お金が足りなくなる)が発生するのであれば
最初のズレ分を上記の赤字金額にさらに合算します。
5 必要な資金と調達の方法(その2)
5 必要な資金と調達の方法
・調達の方法
自己資金と借入
・必要な資金
設備資金と運転資金
上記(「6 事業の見通し(月平均)創業当初、軌道に乗った後(いつ頃)」)の赤字の金額とズレ分の合算金額を、「5 必要な資金と調達の方法」の左側「必要な資金の運転資金」の欄に、軌道に乗るまでの赤字資金として転記します。
次に、「5 必要な資金と調達の方法」の左側「必要な資金」欄を合計します
=この金額があなたが創業に必要な資金の総額です。
最後に、「5 必要な資金と調達の方法」の右側 「調達の方法と金額」を記入します。
=この金額が調達可能であれば、創業計画はひとまず可能性ありと判定できます。
とても調達不可能である場合は、同じ手順で計画の見直しを行うことが必要となります。
なお、会社の場合は、自己資金=資本金となるのが原則です。
※資本金が本当に自己資金であるかは厳密に審査されますので、いわゆる「見せ金」はしてはいけません(自己資金の査定が減額されるだけではなく、融資そのものが認められません)。
また、借入金額に想定金利(年利)を掛け算することで、1年間の大凡の利息が計算できますので、この金額を12で割った数字を最初空欄にしておいた「6 事業の見通し(月平均)創業当初、軌道に乗った後(いつ頃)」の金利欄に記入します。
「創業計画書」の書き方まとめ
このように何度もシュミレーションしながら納得の行く計画を作成することが大切です。
項目と金額はできるだけ具体的に根拠を持って作成することが大切です。
また、とかく売上は計画を下回りやすく、費用は計画を上回りやすいものですので、
実際に積算した数字より、売上は少なめに、費用は多めに計上しておくことで、
より堅い計画の作成が可能となります。
売上計画の作り方
売上数字の算出の仕方には、業界により様々な方法がありますが、一般的には「物理的な売上数値」と「営業的な売上数値」の両面から考えることが大切です。
「物理的な売上数値」とは、店舗の面積や席の数、設備の生産能力、人員あたりの生産量、回転率、納期等、供給側からの制約条件から売上数字を算出する方法です。業界平均数値等統計数字を参考とすることも役に立ちます。
一方「営業的な売上数値」とは、自社の営業力で受注が得られる金額から売上数字を算出する方法です。具体的な客先名や顧客層を分類した上で具体的な数字計画を作成します。
また、営業的な売上数値は広告宣伝費や販売促進費や営業人件費等との経費との兼ね合いも考えることが必要です。
「物理的な売上数値」と「営業的売上数値」の小さい方を売上計画とするのが妥当でしょう。