秘密保持契約書または機密保持契約書(NDA)とは
秘密保持契約書または機密保持契約書(NDA=Non Disclosure Agreement)とは、
企業間取引等のために、 互いの秘密情報(または一方の秘密情報)を開示する際に、
その情報の保護のために結ぶ契約書です。
秘密情報を開示する側を「開示者」、秘密情報を受け取る側を「受領者」と言います。
秘密保持契約書または機密保持契約書では、当事者双方が、「開示者」「受領者」に
なる場合と、どちらか一方が「開示者」であり、他方が「受領者」となる場合があります。
なお、取引基本契約書などの契約書で、秘密保持条項(あるいは機密保持条項)
を設けることがありますが、秘密保持条項(あるいは機密保持条項)を単独の契約書
にしたものが、秘密保持契約書(または機密保持契約書)と考えても良いでしょう。
また、一方の秘密情報の保護を相手方に守らせるのが目的の場合
(上述のどちらか一方が「開示者」であり、他方が「受領者」となる場合が相当)は、
秘密保持契約書に代えて、「秘密保持誓約書」を差し入れる方法もよく取られます。
さらに、当事者が3者以上となる場合も、実際のビジネスにおいてはよくあります。
秘密保持契約書作成のポイント
秘密保持契約書作成の留意事項
秘密保持契約書の目的は、
1)相手に秘密を保持させると言った抑止的効果、
2)実際に秘密が保持されるような安全管理措置を相手に取らせると言った行動を起こさせる効果、
3)万が一秘密が漏洩する等の事件が発生した際の対処方法と、
4)最悪の場合の損害賠償に関する規定を定めることにあります。
さらに、秘密保持を相手に課すのであれば、その前提としての秘密が、
当方でも、適切な管理が行われている必要があります
(自ら適切な管理をしていないような情報は法律で保護されるべき秘密として認められない)。
また、取引先に秘密保持の要求をする以前に、社内からの秘密漏洩の可能性もあります。
従って、社員による「秘密保持誓約書」の提出、社内における秘密情報の管理ルール作りも重要です。
秘密保持契約書の文面を厳しくしても秘密が守られるものではない。
実体行動が大切です
今、作成を検討している秘密保持契約書の目的が具体的にどのようなものかにより、
秘密保持契約書の文面内容も比較的簡単なものから複雑なものまで検討すべき内容が
変わるべきです。
また、秘密保持契約書の文面を厳しくすればより秘密が守られるもの
ではありません。
あまりにも実体とかけ離れた規定は形骸化するのみです。
高いレベルで厳格な秘密保持契約を有効にする為には、
実際に誰がどんな方法でどのように秘密情報を管理し、そのチェック体制と
万が一の事件の際の対処方法等を明確化すること
・・・・情報管理マニュアルを作成し、実際に機能させるような、実体行動が伴って、
はじめて、本当の秘密保持の目的が達成できるものです。
秘密保持契約書の実際、秘密保持契約書のひな形
秘密保持契約書では、一般的に以下のような事項を検討します
■ 秘密保持契約の目的
何の為の秘密保持契約なのか明確とします。
(例)
A株式会社(以下、「甲」という。)と、B株式会社(以下、「乙」という。)とは、
甲と乙が共同で行うCの研究開発(以下、「本件開発」という。)のために
甲が乙に開示する甲の秘密事項の取扱に関し、次の通り契約する。
■ 秘密情報の定義 (秘密情報の明確化)
秘密情報の対象となる情報の明確化をします。秘密情報とは何かを定義します。
「○○に関する全ての情報」のようなあまりに抽象的で大きな定義の場合、
教訓的には良いかも知れませんが、具体性に欠け、
実質的にはどうやって情報を保護するのかの対策が立てられません。
また、あまりに抽象的で大きな定義の場合、法的に秘密情報として認められない場合もあります。
したがって、秘密情報の範囲をできる限り具体的に定義する必要があります。
(例)
本契約において秘密情報とは、本契約有効期間中、本検討に関連して被開示者が開示者から
開示を受ける技術上または営業上の情報であって次の各号の一に該当するものをいう。
(1) 秘密である旨が明示された技術資料、図面、その他関係資料等の有体物により開示される情報
(2) 秘密である旨を告知したうえで、口頭・映像等の無体物にて開示される情報または有体物である
が秘密と明示できない情報であって、かかる情報の開示後30日以内に当該情報の要旨または内容
を書面にし、かつ、当該書面において秘密である旨を明示して提供された情報
■ 例外規定 (秘密情報の明確化)
秘密情報を直接定義すると同時に例外を規定することで、逆に定義の内容を明確化できます。
(例)
前項の規定にかかわらず、次の各号の一に該当する情報については、
本契約における秘密情報として取り扱わないものとする。
(1) 開示のとき、既に公知であった情報または既に被開示者が保有していた情報
(2) 開示後、被開示者の責によらず、公知となった情報
(3) 被開示者が、秘密密保持義務を負うことなく第三者から適法に入手した情報
(4) 被開示者が、開示者の秘密情報によらず独自に開発した情報
■ 秘密情報の使用目的の限定 (目的外使用の禁止)
秘密情報の使用目的を限定します。
使用目的を明確に記述し、目的外使用を禁止するのが一般的な記載方法です。
(例)
甲の乙に対する情報提供は、□□□□について、甲乙が共同研究、開発するための
業務提携締結の可能性を、甲が、乙に検討させることを目的とする。
乙は甲より提供を受けた情報を前項の目的以外に使用してはならない。
■ 秘密情報の漏洩の防止
(例)
甲及び乙は、秘密情報について厳に秘密を保持し、○○で規定する目的の為に必要な
範囲内で甲及び乙の取締役、従業員、弁護士、公認会計士、税理士等に開示する場合
を除き、相手方の書面による承諾なくして第三者にこれを開示し漏洩してはならない。
■ 第三者への開示の際の責任
「秘密情報を第三者に公開してはならない」
と規定しても、実務上は困難な場合は、
第三者への開示の為の条件を明記します。(例:事前に相手方に了解を得た後)
また、とても大切なことは、契約書の規定を守った上で、第三者に情報を公開する
場合においても、その第三者がこの契約の内容を守ることを当事者の責任で遵守
させることです。
■ 秘密情報の管理方法
より積極的に秘密情報の漏洩防止の為には、
秘密情報の管理責任者と管理方法を定め、そのルールを社内で徹底します。
社内からの漏洩(意図的及び不注意)を防ぐため、社員から秘密保持規定遵守誓約書を
提出させることも一般的です。
(例)
甲及び乙は、秘密情報について厳に秘密を保持する為、秘密情報の管理責任者、
管理方法を明確化し、その運用の徹底を図るため、秘密情法管理規定を定める。
前項に関し、甲及び乙は、秘密情報に触れる可能性がある、自社の取締役、従業員等につき、
秘密情報管理規定遵守の為の誓約書を提出させるものとする。
■ 秘密情報漏洩時の対策
もし万が一秘密情報の漏洩や誤って開示を行ってしまった場合の、相手方への報告方法や
対処方法を
あらかじめ明確化しておきます。
■ 損害賠償
本契約に違反した場合、損害賠償が請求できることを明示します。
■ 秘密情報の返却
本契約の目的が終了した際の開示秘密情報の返却方法を明確化します。
さらに、実際に返却が正当になされているかの管理を行うことが大切になります。
■ 契約期間 本契約終了後の秘密情報保護義務
契約期間を定めると共に、本契約終了後も一定の期間、
秘密保持義務を存続させるのが一般的です。
秘密保持契約書作成時に知っておきたい法律「不正競争防止法」
不正競争防止法では、営業秘密や営業上のノウハウの盗用等の不正行為を禁止しています。
秘密保持契約書の作成は、不正競争防止法における営業秘密の保護を受けるためにも、
大切な要件になります。
◆◆◆ 不正競争防止法「営業秘密」に関する詳しい情報はこちらのページを参照ください。
(従業員による)秘密保持誓約書
従業員による秘密保持体制を確立することは、秘密保持の目的達成の為には最も重要なことです。
従業員による秘密漏洩を防ぐ為の「秘密保持誓約書」に関する情報は以下を参照ください。