定款とは、会社の根本規則を記載した書面のことで、株式会社と株主との契約を記載した重要なものです。
「会社の設立は、煩わしい、複雑な手続きを伴いますので、全て、任せてください。社長は本業に専念してください。」と言う主旨の広告を見ることがよくあります。しかし、定款の内容を決めることまで、他人に任せては行けません。定款の内容を決めることは、会社と事業の内容を定めるであり、まさに、本業そのものだからです。
平成18年5月に施行された会社法では、
とりわけ、株式譲渡制限会社※に関する定款による内部自治を大幅に認めています。
従って、どのような定款の内容にするかは、どのようなに会社を経営して行こうかと言うことと大きく関係して来るのです。
※株式譲渡制限会社とは、全ての株式について株式を譲渡する場合に株式会社の承認を必要とする会社のことを言います。
なお、会社設立の際に作られた定款のことを原始定款と呼びます。
会社成立後は、会社の最高意思決定機関である株主総会の決定に基づき、定款変更を行います。
定款に記載する事項には、その法律的性格によって以下の3種類に分類することができます。
1)法律的に必ず記載しなければならないこと (絶対的記載事項)
会社の名前(商号)、会社の事業の内容(目的)、本店所在地、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、発起人の氏名又は名称(法人の場合)及び住所、発行可能株式総数。の6つの事項は、定款の絶対的記載事項であり、これらの記載がないと定款は無効となってしまいます。
2)法律的に記載しなければならない義務はないが、そのことに効力をもたせたければ定款に記載しなければならない。
定款に記載されていない場合は効力をもたないこと(相対的記載事項)
3)必ずしも定款に記載されていなくても効力をもたない訳ではないが、定款に記載することによって(法律に違反しない限り)強い効果を持つこと(任意的記載事項)
株式会社○○または、○○株式会社。外国語名での表記を追加することもできます。
(例)第1条(商号)当会社は、株式会社○○と称する。英文では、○○Corporationと表記する。
※法律で、他の会社と誤認させる商号等の使用は禁止されていますので、注意が必要です。なお、商号で用いることができる文字は、日本文字(漢字、ひらがな、カタカナ)、ローマ字、アラビア数字と特に認められた6つの記号(「&」(アンパサンド)「’」(アポストロフィー)「,」(コンマ)「−」(ハイフン)「.」(ピリオド)「・」(中点))です。
会社が行う具体的な事業内容のことを目的と言います。第三者が見て分かる記述が求められます。
なお、許認可が必要な事業を行うような場合は、その事業内容が定款の目的欄に記載されていることが必要です。
(例)第2条(目的)当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1、○○の製造および販売
2、○○の輸入および販売
3、○○の修理
4、前各号に付帯する一切の事業
(1)都道府県市町村まで記述する方法 (2)市町村以降の番地まで記述する方法 があります。
※(1)の場合は、定款作成後、正式な住所を決める手続きが必要となりますが、将来、同市町村内で本店を移動した場合でも定款変更が不要であると言った利点があります。
(例)第3条(本店の所在地)当会社は、本店を○○県○○市に置く。
資本金の額(絶対的記載事項ではない)を定款で決めておく方法と、定款にはその最低額のみを決めておき、資本金の額は、定款作成後、別に決定する(=その書類必要となる)方法があります。
なお、会社設立に際して出資される財産の価額またはその最低額は、
会社成立後の定款では絶対的記載事項になっていませんので、最初の定款変更の際には削除します。
(例1)第○条(設立時発行株式の数、資本金及び設立に際して出資される財産の最低額)
当会社の設立時発行株式の数は○株、資本金は金○○○万円、設立に際して出資される財産の最低額は、金○○○万円とする。
(例2)第○条(設立に際して出資される財産の最低額)
当会社の設立に際して出資される財産の最低額は、金○○○万円とする。
発起人とは、最初の株主(出資者)のことです。1人以上必要です。自然人(人間) 以外に、法人(会社など)も会社の発起人になることができます。(発起人が引き受ける株式の割当てと払込金額は定款の絶対的記載事項ではなく、定款作成後、別に決定すること(=その書類必要となる)もできますが、以下のように定款で決めることもできます。)
なお、発起人の氏名又は名称及び住所と引受株数、払込金額は、会社成立後の定款では絶対的記載事項になっていませんので、最初の定款変更の際には削除します。
(例)第○条(発起人)当会社の発起人の氏名、住所、および発起人が割り当てを受けた株式の数及びその払込金額は次の通りである。
住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
氏名 ○○○○ 普通株式 ○○株 金○○○万円
会社が発行を認めている株式の上限数のことを言います。
(例)第○条(発行可能株式総数)当会社の発行可能株式総数は、○○○株とする。
相対的記載事項は会社法に詳細に定められていますが、ここでは、一般に知っておきたい重要な事項を紹介します。
株式の譲渡は原則自由ですが、定款で、株主の譲渡制限を設けることができます。
会社法では、譲渡制限のない株式を発行する会社を公開会社、すべての株式に譲渡制限をつけている株式会社のことを公開会社でない会社と言います。公開会社でない会社は、公開会社に比較して、期間設計の自由度が広く認められています。(例:取締役は1名以上で良い、取締役会を置かなくとも良い、取締役・監査役の任期を10年まで伸張することを定めることができる)
(例)第○条(株式の譲渡制限)当会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を受けなければならない。(取締役会設置会社)
(例)第○条(株式の譲渡制限)当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を受けなければならない。(取締役会非設置会社)
株主総会、取締役以外の機関の設置するときには、規定する必要があります。
(例)第○条(機関の設置)当会社は、株主総会及び取締役のほか、次の機関を置く。
1.取締役会
2.監査役
会社法では、取締役の任期は2年・監査役の任期は4年と定められています(定款でそれより短い規定を定めることは可)が、公開会社でない会社(株式譲渡制限会社)については、定款で定めれば、それぞれ任期を10年まで延ばすことが可能となります。
(例)第○条(任期)取締役の任期は、選任後5年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 補欠又は増員により選任した取締役の任期はその選任時に在任する取締役の任期の満了すべき時までとする。
現物出資をした場合、普通株式と異なる株式を発行した場合、株券を発行する場合(原則株券は不発行なのであえて発行する場合は定款で規定必要)等
ここでは、任意的記載事項の中で一般に知っておきたい重要な事項を紹介します。任意記載事項であっても、その事項が登記事項の場合は、定款で定めておけば、手続きが1回で済みます。
(例)第○条(設立時資本金の額)当会社の設立時資本金は、金○○○円とする。
(例)第○条(設立時に発行する株式の数)当会社の設立に際して発行する株式の総数は○○株とし、その発行価額は1株につき○○○円とする。
決算公告の方法が原則官報となっていますが、定款により、新聞やホームページに変更することができます
取締役の人数に制限を加えることができます
(例)第○条(最初の取締役及び監査役)当会社の最初の取締役及び監査役は、次のとおりとする。
取締役 ○○○○ ○○○○ ○○○○
監査役 ○○○○
取締役が複数いる場合は、代表取締役を定めることができます(取締役会非設置会社の場合)
会社が会計決算を行う区切りの期間。決算日(1年を超えない範囲で任意に決めることができる)
定款の認証は、本店を管轄する法務局内の公証人へ依頼して行います。
会社成立後の定款変更は、株主総会の決議により行います。
また、登記事項に関する定款の変更は定款の変更登記を行う必要もあります。
原始定款+議事録=最新の定款 となりますが、会社では、定款変更箇所は書換え、絶えず、最新の定款を常備して置きましょう。