個人事業(フリーランス)の始め方

個人事業のメリット、デメリット

個人事業のメリット、デメリット(形式面)

届出のみで始めることができる

但し、資格や許認可が必要な事業は許認可が必要=個人も会社も同じです。但し、法律で、個人でなければできない業務、会社でなければできない事業もあり。また、個人でも会社でも、当該事業に関する法令を遵守する必要があります。

※許認可や行政機関への届け出が必要な業種に注意!

法律により許認可の取得が必要な業種の(例)です。
特に最近はインターネットを使って簡単に事業を始めることができますが、法律違反にならないように事前に調査しましょう。

飲食店、食品の製造販売、宿泊業、医薬品販売、風俗業、古物商、建設業、運送業、酒類販売、不動産業、人材派遣業、ガソリンスタンド、旅行業、ペットショップ

所得税の申告制度は、白色申告、青色申告を選択できる

白色申告の場合、単式簿記で良く、税務申告が簡単にできます。一方、青色申告の場合、複式簿記による記帳が必要となりますが、税法上様々な特典があります。 → 青色申告制度の詳細は国税庁のホームページで確認できます

国民健康保険、国民年金へ加入必要

個人事業主は、社会保険(健康保険、厚生年金)に加入できませんので、国民健康保険、国民年金への加入が必要です。

個人事業のメリット、デメリット(実質面)

個人事業では、経営と所有を分離せず、事業の収入=個人の収入 となります。個人事業の第一のメリットは、個人で身軽に始めることができることです。個人の責任、個人の信用、個人の技術、(個人の所有する)店舗の信用等をベースとした事業に適しています。また、個人事業で始め、途中で会社に組織変更する(法人なり)方法もあります。

会社は、所有(株主)と経営(取締役)を分離し、組織として事業を行うことが最大の特色となります。(株主が会社の意思を決め。会社は経営者に会社の経営を委任し、経営者は給与所得者として会社から報酬を請ける)。2人以上の株主や経営者で運営を行う場合は当初より会社組織にした方が、組織が明確になり、外部に対する信頼も得やすいと言えます。但し、一旦、会社を設立してしまうとその内容の変更には一定の手続きが必要ですので、設立前から計画的に行うことが大切です。


個人事業の開始手続き

個人事業は、法律で許認可を得ることが必要とされている事業以外は、原則、誰でも、すぐに始めることができます。但し、開業後、届けなければならないことと、届けることにより、税務上有利な適用を受けることができることがあります。また当初より領収証の保存方法や簡単な帳簿記帳方法を決めておくと、税務申告がスムーズに行われ、後で損をしないですみます。さらに、事業開始は、国や地方公共団体等からの各種助成金を得るチャンスでもありますので、その適用が可能であれば、開業前から、計画的な準備が必要となります。

屋号の決定(任意)

個人事業を開始するにあたって、屋号(その事業上、自己を表現するために用いる名称のこと)を用いることおよびその変更は原則自由であり、特に、届出は必要ありません。但し、以下のような制約があります。

1.営業に許認可がいる業種で屋号を届出るもの
2.法律上使っては行けない名称を用いることの禁止(例:会社でないものが○○会社と名のること)
3.他の会社と誤認させる商号等の使用禁止

なお、税務署へ提出する開業届出書類には屋号記入欄がありますが、これは、税務署が、個人事業者の使用する屋号を把握する目的であり、税務署に屋号の使用許可を得る訳ではありません。上記に書きましたように、屋号を用いることは原則自由であり、このことは、個人事業者としての届出とは直接関係のないことです。

屋号の使用は、誰でも原則自由と言うことは、他人が貴方と同じ屋号を用いることも自由であることを意味します。「自らの屋号に対して法的な保護を得ることはできないか?」との要望に対しては、個人事業者が屋号を法務局へ商号として登記することにより可能となります。商号とは、会社名のような自らの事業名の名称です。なお、登記には料金がかかります。

印鑑の作成(任意)

会社の場合は、法人として、法務局へ設立登記する際、代表者印を登録すること(=会社の実印)が必須となりますので、代表者印の制作が必要となります。対して、個人事業の場合は、法律的にはあくまで個人ですので、市役所へ登録してある実印が、事業においても実印となります。(実印ではない)事業に用いる印を任意で作成、使用するのは自由です。実際には屋号名を入れた印が必要となる場合は多くあるのではないでしょうか?(なお、屋号を商業登記する場合(「屋号の決定」参照)は、登記に使用する印鑑を法務局へ印鑑登録します。その際、個人の印を印鑑登録しても良いですが、個人の印とは別の事業用の印を印鑑登録することもできます)

事務所の決定(自宅を事務所にする場合は不要)

各種届出には住所が必要となります。 税務申告の際、事務所経費を税務署に認めてもらう為には、自宅経費との区分基準を明確にしておくことが大切です。

電話の敷設(自宅電話と兼用する場合は不要)

同上、各種届出には電話番号が必要となります。 携帯電話でも仕事はできますが、一般的に、固定電話がないと対外的信用度の点で問題となることが予想されます。留守がちで外で仕事をするタイプの方は、固定電話から携帯電話からの転送サービスを申し込めば良いでしょう。電話会社に電話で申し込めば、電話番号はすぐにもらうことができますので、名刺や各種書類に、電話番号が記載ができるようになります。インターネットと合わせて設置を検討している場合は、ひかり電話等の電話とネットとセットになったサービスが大変経済的です。

経費領収証、レシートの保存。管理方法の確定

領収証やレシートの保存・・・・事業開始後は、誰もが気をつけるでしょうが、忘れがちなのが、開業準備段階のもの。開業の為に要した費用も原則事業経費として認められますので、当初より、領収証やレシートの保存には気を配りましょう。その際、気をつけなければならないのは、個人の生活経費のものと明確に区別できる証拠を残しておくことです。(例:いつ何の目的でどのように使ったのかメモをつけるとか、写真や説明書等関連書類を保存しておく等)

さらに、事業開始後も経理をどのように管理していくかを決めておくことが大切です。
これは、1)最低限、税務申告の為 と  2)自らの経営状態を管理するために必要だからです 。

銀行口座の開設(事業専用口座の開設が望ましい)

銀行口座開設のメリット

個人事業の場合、事業用銀行口座の開設は必須ではありません。個人の口座をそのまま使っても法律上の制約はありません。 しかし、経営上は、個人の口座とは別に、事業専用口座を開設する方が望ましいと言えます。その理由は以下の為です;

1.税務申告の際、事業のみの口座の方が、事業収支の事実が明確となり便利です。
2.将来、融資や助成金を申込みをする場合、通帳の提出を要求される場合があります。その際も同様に事業のみに限る収支明細が通帳に載っている方が分かり易いといったメリットがあります。
3.上記のほかにも事業を行っている場合、事業用の通帳をどこかへ提出しなければならないような場合があるかもしれませんが、個人と通帳が分かれていれば、事業とは関係のない個人の生活に係わる収支まで提出する必要はありません。

銀行口座開設手続き

各銀行ごとに、個人事業主の口座開設手続きが決まっており、その手続きに従うことになります。近年、振込詐欺に代表される架空銀行口座を利用した犯罪が多発していることにより、銀行口座の開設手続きは、面倒になって来ています。個人事業の場合「○○商店 井藤真生」と言ったように、屋号+氏名の口座名となります。

なお、インターネット接続環境を持っている方は、口座開設の際に合わせて、ネットバンキングの利用申込も行うことをお勧めします。月末の銀行ATMは非常に混雑しており、ネットで送金処理やオンラインで残高確認ができるネットバンキングは大変重宝します。ネットバンキングのシステムは銀行により異なります。一般に、個人向け口座は、ネットバンキング利用料無料、法人(事業)向け口座は、ネットバンキング利用料有料(月1050円程度)です。個人事業の場合、ネットバンキング利用料が、個人口座の扱いで無料の銀行と、事業用だから有料としている銀行があるようです。

税務署への届出

1)個人事業の開廃業等届出書(必須)

新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき又は事業を廃止したときの手続きです。事業の開始等の事実があった日から1月以内に提出してください。
→→→ 個人事業の開廃業等届出書に関する国税庁のホームページ

2)所得税のたな卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書

たな卸資産の評価方法の届出をする場合の手続きです。届出により選択をしなかった場合は、最終仕入原価法が適用されます。
→→→ 所得税のたな卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書に関する国税庁のホームページ

3)所得税の青色申告承認申請書

青色申告の承認を受けようとする場合の手続きです。青色申告とは、一般の記帳(白色申告)より高い水準で会計記帳を行うことを条件に、所得税法上の特典を得ることができる制度です。様々な特典がありますが、大きなものとして、65万円の青色申告特別控除が受けられること。損失の繰越控除が3年間できる(白色申告では、前年度赤字でも、今年度黒字に対する納税発生。青色申告では今年度の黒字から前年度の赤字を差し引くことができる)こと。青色事業専従者給与控除・・・生計をともにする配偶者は家族に払った給与を一定の条件で経費とすることができる。その他にも経費として認められる範囲が広い。等
→→→ 所得税の青色申告承認申請書に関する国税庁のホームページ

4)青色事業専従者給与に関する届出書

青色申告者の特典のひとつである「生計をともにする配偶者は家族に払った給与を一定の条件で経費とすることができる」制度の適用を受けるためにする届出書です。B(所得税の青色申告承認申請書)にプラスして提出します
→→→ 青色事業専従者給与に関する届出書に関する国税庁のホームページ

5)従業員を雇い入れる場合に関連する書類

従業員を雇い入れた場合は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」の提出が必要です。また、従業員10名以下の事業所では、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書」を提出することにより、源泉所得税の納付時期の特例措置を受けることができます。
→→→ 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出に関する国税庁のホームページ
→→→ 源泉所得税の納期の特例の承認兼納期限の特例に関する届出書に関する国税庁のホームページ

都道府県と市町村への届出

個人事業の開始申告書(必須)

都道府県と市町村にそれぞれ提出する必要があります

従業員の市県民税の特別徴収の届出(従業員がいる場合)

従業員の給与所得に関する市県民税の納税を特別徴収(一括納付ではなく毎月納付すること)にする場合。1月〜2月頃届出を申請し、6月から新年度の特別徴収が始まります

労働基準監督署、ハローワークへの届出(従業員を雇い入れたとき)

従業員を1人以上雇い入れたときは、雇用保険、労災保険に加入しなければなりません。
まず、労働基準監督署で労働保険の加入申請手続きをします。公共職業安定所(ハローワーク)で、雇用保険(失業保険)の手続きを行います。なお、従業員が10名以上の事業所は就業規則の作成と労働基準局への届出が必要となります。

雇用保険の関連の助成金を申請する場合は、上記のほかに必要手続きがあり、計画的に行う必要があります。

社会保険事務所への届出(従業員5人以上または任意)

社会保険加入手続きを行い、健康保険および厚生年金の適用事業所になります。
(事業主の国民年金の加入は市町村役場の国民年金の窓口で行います)