書籍「これからの起業と経営のヒント」のご案内
著者からのごあいさつ
どうせ起業してから悩むのであれば、準備段階からしっかり考えましょう
起業の動機が「お金を儲けること」であっても、「やる気」があることは社会にとっても良いことです。なぜならば、「ビジネスとは、自分の持っているモノを使って、他者に貢献すること」だからです。本人の動機が「私利私欲」であったとして、例えば、自身の土地に自分が住む住宅を建てるのではなく、賃貸住宅を造り、その住まいに住むことによって利便性が得られる人がいるのであれば、そこに住む人に対して価値を提供していることだからです。
事実、伝統的には、それで、経済や社会が回っていました。人や企業は、好き勝手な行動をしても「神の見えざる手」のお陰で世の中は良い方向に行くという資本主義の基本的な考え方です。個人や私企業はたくさん働いて儲けることは素晴らしいことであり、結果、たくさん税金を払うことが社会貢献だと考えられていました。
しかしながら、徐々に、経済が発展し、いろんな商品やサービスが社会に充足する時代になると、「私利私欲」だけでは、商品やサービスが売れなくなって来ました。市場の成熟化です。インターネット等情報社会の発展もあり、供給者の都合(私利私欲等)とは関係なく、お客さんは、自分の気持に沿った商品やサービスを選ぶことができる時代に代わりました。
一方、政府が主に担っていた社会的な課題解決の仕事も、従来は道路や橋や学校、病院、公共施設などを建設することに大きな意義がありましたが、それらの開発行為も進むにつれ、いわゆる箱物行政だけではなく、より住民の心に寄り添う政策ニーズが増して来ました。
多くの起業家は、このような事実に気づき、これからの時代は「私利私欲」のような自身の都合だけを言っていてもビジネスが上手く行かないことを知ります。「ビジネスとは、自分の持っているモノを使って、他者に貢献すること」を再認識して、自らの顧客(市場)は誰であり、その顧客にどんな価値を提供して行くべきかを考えるようになるのです。
私は、平成20年にそれまでの企業での事業経営の知識を活かして、行政書士及び法人経営コンサルタントして開業して以来、毎年年間200件以上の起業相談や新規事業化相談に係って参りました。相談者の方からは、1年以上前から用意周到な相談を頂く場合もあれば、一方で、「今すぐ何とかしなければならない」緊急なテーマを頂く場合も少なくありません。もちろん、緊急な場合も出来る限りの対応策を考えるのですが、できれば、もう少し前にご相談頂いたら、「より良い方法で、よりコストも低く押えることができたのに」と嘆くこともしばしばあります。本書では、「どうせ悩むのであれば、起業してから慌てて悩むのではなく、準備段階から、しっかり計画的に準備して行こうよ。」のメッセージを込めて書きました。
なお、本書は、起業をこれから考える人を主な前提としていますが、既に起業している人が自身の経営を見直す際にも有効です。また、特に起業の予定がない人にとっても、自身の仕事と人生を考える為に有益な考え方を提供するものです。本書に出てくる多くの「ビジネス」と言う単語を「人生」と置き換えて読んで頂いても結構です。(書籍「これからの起業と経営のヒント」のまえがきより)
本書の目次
本書の目次を紹介します
まえがき
第1章 起業に必要な3つの準備
1 起業に必要な3つの準備
(1)起業とは?ビジネスとは?会社で働くこととの違いは?
(2)経営資源とは?
(3)自分の好きなことで働きたい
2 ビジネスに必要な思いと心
(1)思いと心が行動の源
(2)この世は心の思った通りになる
(3)他者を味方にする思いとは
3 ビジネスに必要な技術と知識
(1)専門知識とビジネスに関する知識は同時に高めて行こう
(2)専門知識や技術習得の意義
(3)ビジネス知識と経営者マインドを磨こう
4 ビジネスに必要なアイデアと計画
(1)アイデアと計画の関係
(2)アイデアの出し方
(3)ビジネスモデルと事業計画(ビジネスプラン)
第2章 ミッション
1 ミッションとは
(1)ビジネスに必要な思いと心とミッション
(2)経営理念、企業理念、社是、クレドなど
(3)ミッションの90%は、既に決まっている
2 今ミッションが重要な理由
(1)事業の目的は、ミッションか利益か?
(2)以前はあまりミッションを意識しなくても良かった
(3)ミッションの差が商品やサービスを異なるものにする
3 ミッションを経営に活かす
(1)マニュアルよりミッション
(2)ミッションで事業を整理、統合する
(3)経営とはミッションを実践すること
4 ミッションとビジョンの話
(1)ミッションと夢や目標との違い
(2)ミッションとビジョンの話
(3)ミッションをより良く実践する方法
第3章 ビジネスモデル
1 ビジネスモデルとは
(1)ビジネスモデルとはバランスが取れた仕組みのことである
(2)現実のビジネスモデル
(3)仮定のビジネスモデル
2 ビジネスモデル思考を持とう
(1)ビジネスモデル思考とは
(2)ビジネスモデルとミッションの関係
(3)ビジネスモデルとニーズの関係
(4)ビジネスモデルとビジネスプランの関係
(5)人生のビジネスモデル
3 ビジネスモデルの創り方
(1)5W2H法
(2)5W2H法のさらにポイントを絞った、3W1H
(3)ビジネスモデルをカタチ創る7つのポイント
4 ビジネスモデルをカタチ創る7つのポイントの実際
(1)何のために(ミッション)
(2)誰がどんな資源を使って(経営資源)
(3)誰のために(あなたのお客さんは誰ですか)
(4)どんな価値を創造する(イノベーション)
(5)どのように価値を届ける(マーケティング)
(6)どのように利益を得るか
(7)どのように継続していくか
第4章 ビジネスプラン
1 ビジネスプランとは
(1)事業計画と経営計画とその目的
(2)ビジネスプランとビジネスモデル、ミッションの関係
(3)ビジネスプランの一般的な構成
2 行動計画と時間管理の話
(1)(準備編)ビジネスモデルをベースにやるべきことを書き出す
(2)(運営編)日常のオペレーション行動を書き出す
(3)行動計画としてまとめ、実際に行動を行う
3 行動予算とお金の話
(1)行動計画の(準備編)を元に起業準備予算とイニシャル予算を計画する
(2)行動計画の(運営編)を元にランニング予算を計画する
(3)予算書としてまとめ、実際に予算管理を行う
4 管理は、PDCA+Mのマネジメントサイクルで
(1)PDCAのマネジメントサイクルとは
(2)起業準備段階からPDCAのマネジメントサイクルを利用する
(3)PDCA+Mで
第5章 社会、自然、環境、地球を味方にする起業と仕事
1 ソーシャルビジネスとは
(1)日本におけるソーシャルビジネスの定義
(2)ソーシャルビジネスとコミュニティビジネス
(3)より広い意味でのソーシャルビジネスとコミュニティビジネス
2 ソーシャルビジネスとミッション、ビジネスモデル
(1)ミッションで社会やコミュニティを意識する
(2)ビジネスモデルに社会性やコミュニティを取り入れる
(3)マーケティング3.0という考え方
3 オシャレに社会貢献がカッコ良い
(1)人は社会的動物。他者に貢献すると嬉しい
(2)社会、自然、環境、地球を味方にする仕事を
(3)オシャレに社会貢献がカッコ良い
(4)自分で考え、自分で行動し、自分の人生を生きる
第6章 起業の手続
1 法律編
(1)その仕事、法的に大丈夫ですか?
(2)文書の整備
2 個人事業手続編
(1)開業届、青色申告等
(2)会計業務
3 法人設立手続編
(1)法人設立のメリットとデメリット
(2)様々な法人
(3)法人設立の手続(株式会社の場合を中心に)
4 共同経営編
(1)共同経営のメリットとデメリットと対策
(2)共同経営の対策はコミュニケーションと「共同経営契約書」
あとがき「この世をより良きものにするために」
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あとがき
「この世をより良きものにするために」
本書の第5章でもとりあげた「コトラーのマーケティング3.0」(朝日新聞出版)に寄れば、新しいマーケティング3.0の目的は、「この世をより良きものにするために」であるとのことです。一昔前では、「そんなきれいごとを」と多くの人が感じたかも知れません。
しかし、「この世をより良きものにしたい」とは、本当は誰もが思うことではないでしょうか。人の親であれば、子の世代に良い世界を残してやりたいと考えるのが常ではないでしょうか。子の話を持ち出すまでもなく、「誰かの為に役に立ちたい」「社会のために役立ちたい」と考えるのは、人の自然な気持ちだと思います。
さて、そんな他者に役立つ事業や仕事を行うために、大きな目標を立てて、その目標を達成するために今の自分に不足しているものを探して、その不足しているものを手に入れるために毎日頑張るのも素晴らしいことかも知れません。事実、そのような目標管理で自らを律することで達成感を通じて幸せを感じることができる人もいます。
一方で、目標通りになかなか行かず、ダメな自分を攻めて、努力が足りないと落ち込んでいる人もいます。時には、反省も必要でしょうが、落ち込んでばかりいたら、一番、大切な今、この時を不幸に過ごすことに成りかねません。
今、ダメな私、不幸な私があって、未来に、素敵な私、幸せの私があると考えるのは、非常にリスクを伴います。未来に、素敵な私がなかったとき、不幸が倍増してしまいます。また何より、大切な今を不幸に過ごしていては本末転倒ではないでしょうか。
本書で提唱しているミッションを大切にする考え方は、将来の目標ではなく、今も将来も(と言うより、むしろ、永遠の今を対象にして)共通な大切にしたい価値観、考え方、姿勢を大切にしようというものです。目標が「なること」を言っているとしたら、ミッションは「あること」を言っているといっても良いかも知れません。例えば、世界一のサービスをミッションにするのであれば、今日から、世界一を意識して行動すると行ったことです。もちろん、ミッションは目的であって、その目的をより良く実践するためには、手段や手順が必要です。それが、ビジネスモデルであり、ビジネスプランです。これらは、実際にやってみて、ミッションと比較して、問題があれば、どんどん変えれば良いのです。
時には、ミッションすら変える必要(これはむしろ発見と言った方が最適でしょう)が、生じるかも知れません。その場合、多くはミッションがバージョンアップされたものであり、歓迎すべきものです。
植物においては、小さな種が花になり、実がなり、また新しい種を生みます。種には、あらかじめ、全ての能力が備わっているのであって、けっして、ないものを求めて努力するのではなく、その植物本来の能力が発揮されることで、小さな種が花になり、実がなり、また新しい種を生みだすのです。
我々人間も自然界の一員です。全ての能力は既に備わっています。素直に、自身の内なる声を聞き、自然体で能力を発揮することで、花も実もなることでしょう。